同相(三相)比較
同じ機器内で、同様の負荷を持つ相同士を比較します。一つだけ温度分布が大きく違えば、確認すべき候補になります。
設備保全 / 予防保全
公開日:2026/09/02 | 読了目安:約20分

設備点検でサーモグラフィを使う目的は、単に「温度を測ること」ではありません。分電盤、配電盤、モーター、軸受、配管、空調設備などを広くスキャンし、普段と違う温度分布を早く見つけることに大きな価値があります。
ただし、熱画像で赤く見えた場所をそのまま「故障」と決めるのは危険です。設備の負荷、周囲温度、放射率、反射、同じ設備との比較、過去データなどによって見え方は変わります。そのため設備点検では、撮ることより、同じ条件で比較できるように記録することが重要です。
サーモグラフィ設備点検は、正常状態の決定 → 負荷条件の確認 → 広域スキャン → 相対比較 → 記録 → 修理後・次回再比較の6ステップで運用しやすくなります。重要なのは「○℃だから故障」ではなく、似た条件の対象と比べて不自然な差があるかを見ることです。
サーモグラフィカメラは表面温度の分布を画像として表示します。異常を確定する装置ではなく、異常の可能性がある場所を見つけ、追加確認へつなぐ一次スクリーニングとして使います。
一点式の放射温度計と違い、画面内の広い範囲を一度に確認できます。分電盤、配電盤、端子・ブレーカー、モーター、軸受、ポンプ、配管、HVAC、断熱部などを巡回するときに、目視だけでは気づきにくい温度差を探す用途で使われます。
温度上昇には負荷、周囲温度、材質、放射率、表面反射、運転時間など多くの要素が関係します。熱画像だけで原因まで確定できるとは限りません。壁の向こうや内部の状態を透視できるわけでもありません。
点検前 → 広域スキャン → 比較 → 記録 → 修理後確認の順に整理すると、日常巡回へ組み込みやすくなります。
同相・同型・左右・過去画像など、何と比較するかを決めます。比較対象がないと、一回だけ撮った温度が高いのか低いのか判断しにくい場合があります。
負荷、運転時間、周囲温度、換気状態を記録します。無負荷の画像と高負荷の画像を単純比較して「○℃高いから異常」とは判断できません。
最初から一つの端子だけ拡大するより、盤全体・設備全体を広く見て不自然な温度差を探します。
絶対温度だけでなく、同相・同型・左右・過去画像との差を見ます。「○℃だから故障」ではなく、似た条件の対象と比べて不自然な差があるかを確認します。
熱画像だけでは後から位置が分からなくなります。設備名・番号・運転状態・負荷・周囲温度・撮影距離とセットで残し、次回同じように撮れる情報を残します。
異常候補を見つけて終わりではなく、修理・調整後に再撮影し、温度分布がどう変わったかを記録します。次回巡回でも同じ条件に近づけて比較します。
異常画像を探す前に、何を正常と比較するかを決めます。比較しやすい4つの基準があります。
同じ機器内で、同様の負荷を持つ相同士を比較します。一つだけ温度分布が大きく違えば、確認すべき候補になります。
同じ型式・同じ用途のモーターや盤が複数あるなら、同じような運転条件で比較します。
軸受の左右、配管の前後など、構造上比較できる場所を使います。
同じ設備の過去画像と比較できれば、「以前より温度差が大きくなった」という変化を追いやすくなります。最も価値が高い比較方法です。

サーモグラフィの巡回では、毎回まったく同じ温度になるとは限りません。無負荷の画像と高負荷の画像を単純比較してはいけません。
例えばモーターなら、負荷、稼働時間、周囲温度、換気状態で表面温度が変わります。撮影時には点検日時、設備名、運転状態、負荷の目安、周囲温度、撮影距離などを記録しておくと、次回比較に使いやすくなります。
最初から一つの端子だけ拡大するより、盤全体・設備全体を広く見る方が異常候補を探しやすくなります。

盤全体を見ながら、端子・ブレーカー・ヒューズ・ケーブル接続部などに周囲と違う温度分布がないか確認します。電気設備の点検は設備規程、有資格者、安全手順、必要なPPEを優先してください。
モーター本体、軸受、カップリング周辺を広く確認します。左右差、同型機との差、過去画像との変化を比較すると異常候補を見つけやすくなります。
温度ムラ、断熱状態、流れの変化、空調吹出口周辺など、面で見ることで気づきやすい変化があります。


高温=異常という考え方は誤解のもとです。絶対温度はそれほど高くなくても、同じ条件の他の相や同型設備と比べて一箇所だけ違う場合は確認が必要です。
同相・同型・左右・過去の4比較を使い、特に過去画像とのトレンドが重要です。単発の画像より、同じ設備を同じ条件に近づけて繰り返し撮ることで、変化を見つけやすくなります。

熱画像を見たときは、原因を決めつける前に「どんな差か」を整理します。
パターン A
一点だけ周囲より温度が高いパターンです。接続部・接触部などで見られることがありますが、熱画像だけで原因を断定せず追加確認へ進みます。
パターン B
一部分ではなく全体が高い場合は、負荷や運転条件の影響も確認します。高温になることが正常な設備もあります。
パターン C
三相のうち一相だけ、同型機のうち一台だけなど。比較対象があると気づきやすいパターンです。
パターン D
前月より高い、前回より温度差が広がっているなど。トレンドは予防保全の手掛かりになります。
熱画像だけを保存すると、後から「どこの端子か」分からなくなることがあります。FLIR C5 / C3-XのMSXで可視画像の輪郭を重ね、次回同じように撮れる情報を残します。
サーモグラフィの価値は異常候補を見つけて終わりではありません。修理・調整後に再撮影し、温度分布がどう変わったかを記録します。
Wi-Fi対応のC5 / C3-XではFLIR Igniteへ画像をアップロードできるため、撮影 → 保存 → 整理 → 共有という流れを作りやすくなります。

C3-Xは128×96、-20~300℃、MSX、5MP可視カメラ、Wi-Fi、FLIR Ignite、IP54、約0.19kgのポケット型です。日常巡回で広くスキャンし、普段と違う温度差がないか探す役割に向きます。

P/N 90501-0201
128×96、MSX、Igniteを使い、普段と違う温度差を広く探す日常巡回向けポケット型。
向く用途:分電盤・モーター・空調・配管などを日常的に広域スキャンする一次スクリーニング
楽天市場で見るC5は160×120、-20~400℃、MSX、1-Touch Level/Span、Wi-Fi / Ignite、IP54を備えます。巡回中に気になった小さな端子・接続部をもう少し見分けたい用途に向きます。

P/N 89401-0202
160×120、400℃、1-Touch Level/Spanで、巡回中に気になった小さな端子・接続部をもう一段見分けたい用途向け。
向く用途:広域スキャン後に異常候補を絞り込み、300℃超の対象も含めて確認したい巡回
楽天市場で見るスペック比較を最小限にし、巡回の粒度で役割分担を考えます。「毎日の広域巡回」ならC3-X。「より細かな異常候補も見る」ならC5です。
| 巡回用途 | C3-X | C5 |
|---|---|---|
| 広域スクリーニング | ◎ | ◎ |
| 基本設備点検 | ◎ | ◎ |
| 小さい対象をより見分けたい | ○ | ◎ |
| 300℃超~400℃ | — | ○ |
| 1-Touch Level/Span | — | ○ |
| Ignite記録 | ○ | ○ |
設備点検では金属部品が多いため、放射率と反射は重要です。表示温度が必ず対象物の真の表面温度を示すとは限りません。
磨いたアルミ、銅、ステンレス、光沢金属などは反射の影響を受けやすくなります。低放射率の表面では周囲の熱源が反射してカメラへ入る場合があります。放射率、反射、撮影角度、距離、周囲環境を意識してください。

C5 / C3-Xは日常巡回に便利ですが、万能ではありません。「コンパクトだから全部できる」ではなく、巡回点検の入口としてどこまで担当させるかを決めて導入します。
対象が遠く小さい場合は、より高解像度・狭い視野角・望遠レンズ対応機などが必要になる場合があります。
小さな部品の温度を定量的に見る場合も、より高解像度な機種が適します。
異常箇所を見つける一次スクリーニングと、原因を確定する精密診断は分けて考えるべきです。
24時間の異常温度監視なら、ハンドヘルド型ではなく固定型のサーモグラフィシステムを検討します。
このチェックリストを毎回使うと、「写真はあるが比較できない」という状態を減らせます。
設備表面の温度分布を可視化し、周囲・同型設備・過去状態と違う温度分布を探せます。電気設備、モーター、軸受、配管、HVACなどの一次スクリーニングに使われます。
必ずしも故障とは限りません。負荷、周囲温度、放射率、反射、運転時間などの影響を受けます。同相・同型設備・過去画像などとの比較が重要です。
サーモグラフィは分電盤・配電盤・ブレーカー・端子等の異常発熱候補を非接触で探す用途に使われています。ただし電気設備の点検は設備規程、有資格者、安全手順、必要なPPEを優先してください。
モーター本体や軸受周辺の温度分布を見ます。左右差、同型機との差、過去画像との変化を比較すると異常候補を見つけやすくなります。
128×96、MSX、Wi-Fi / Igniteを備え、日常巡回で温度差を広くスクリーニングする用途に使いやすいコンパクトモデルです。
C3-Xより高い160×120の熱画像解像度、400℃までの測定範囲、1-Touch Level/Spanが必要な巡回に向きます。
測定条件次第です。放射率、反射、距離、周囲温度などが影響します。特に光沢金属は注意が必要です。表示温度が必ず対象物の真の表面温度を示すとは限りません。
今回紹介している2ページはいずれもメーカーPart Number 89401-0202のFLIR C5 Wi-Fiです。記事では別機種として扱っていません。
同じC5(89401-0202)の販売ページが2つありますが、別機種ではありません。
FLIR C5 89401-0202の別掲載ページを見る設備点検へサーモグラフィを導入するとき、重要なのは熱い場所を探すことだけではありません。正常状態を残し、負荷条件をそろえ、広くスキャンし、同相・同型・過去と比較し、画像と条件を記録し、修理後に再確認する——この流れが作れて初めて、サーモグラフィが日常巡回の中で生きてきます。
コンパクト型なら、C3-X=日常の広域スクリーニング、C5=より細かい異常候補・400℃・1-Touchという役割分担が分かりやすいでしょう。
日常巡回の入口として、C3-XとC5の役割を確認したうえで一覧から比較できます。